共有名義の不動産を売却する場合、関連民法の解釈や共有者間の合意形成が重要です。
しかし共有者同士の利害が一致せず、トラブルに発展するケースが多いといわれています。
共有名義の不動産は、自分一人が現金化のために「売却したい」と思っても、ほかの共有者の同意が得られなければ売却できません。
本記事では、共有名義の不動産を売却するために選択すべき方法や、起こりやすいトラブルと対処法をご紹介します。
この記事を通して「売却方法」「手順」「戦略」を知ることで、共有名義の不動産をスムーズに売却できるようになるでしょう。
不動産を共有名義にする3つのケース
共有名義とは、土地や建物など1つの不動産を複数人の名義で登記した所有形態をいいます。
不動産が共有名義になる要因としては、以下のようなケースが挙げられます。
・夫婦でそれぞれ資金を出し合って共有名義でマイホームを購入した
・親子で資金を出し合って二世帯住宅を購入した
・親が亡くなり、複数の子で不動産を相続した
共有名義人にはそれぞれ、法定相続割合や不動産購入時に費用をいくら負担したかによって持分割合が決まっています。
共有名義の不動産の扱いにおいては「自分の持分割合がどのくらい」が、たいへん重要なポイントになります。
共有名義で不動産を所有するメリット
共有名義でマイホームを所有するメリットの一つが、不動産購入時にそれぞれの名義人が住宅ローン控除を受けられることです。また将来のマイホームの売却時には、それぞれの名義人が3,000万円特別控除を受けられ、大きな節税になります。
共有名義で二世帯住宅を所有するメリットは、双方の収入合算により住宅ローンの借入限度額を最大化できることです。親・子それぞれが単独で計画するケースより、希望に叶う住宅が手に入りやすくなります。
共有名義で遺産を相続するメリットは、相続人それぞれに公平(法定相続割合)に分けることで、揉めずスムーズに相続手続きができることです。また親夫婦の共有名義の不動産なら、どちらかの持分のみの相続になるため、相続税の節税が可能になります。
共有名義で不動産を所有するデメリット
共有名義で不動産を所有するデメリットの最たる例は、売却しにくいことです。なぜなら、発起人が9割の持分を所有していても、売却には現行民法251条の定めにより、共有名義人全員の同意が必要になるからです。
仮に離婚にいたると、財産分与が難しくなるデメリットもあります。婚姻期間に築いた財産は、財産分与において折半が原則です。購入時の持分割合が財産分与に適用される訳ではありません。
くわえて、共有者が亡くなった場合、相続時の権利関係が複雑になるデメリットもあります。共有者の片方が亡くなった場合、相続人の共有者が増えることで、予期せぬ共有関係ができてしまい権利関係も複雑化するのです。
また共有名義では、不動産取得時に発生する諸経費が名義人それぞれに発生し、初期費用が倍化することもデメリットの一つといえるでしょう。
共有名義の不動産は売却できる
共有名義の不動産の全体売却は、共有者全員の合意形成が前提ですが、自分の持分の売却なら単独で行えます。
しかし、単独名義のケースと異なり注意しなければならない要項も多いため、売却を検討する前に確認しておきましょう。
自分の持分は自由に売却できる
売却については、民法第206条に基づき、自己持分のみであれば自分の意思で自由に行うことが可能です。
自己持分とは、複数人で共有している不動産の中で、自分が権利を有する割合のことをいいます。
前述したように、共有名義の不動産の持分割合は、不動産購入時に出資した金額の割合や、相続の場合は法定相続分の割合で決まります。
あくまでも「面積」の割合ではなく「権利の割合」のため、注意してください。
売却以外にも、壁紙の張り替えや外壁の修理など、損耗している部分の補修も一人の意思で行えます。(保存行為)
しかし建物のリフォームや短期の賃貸などは、共有持分の過半数の同意が必要なことに注意が必要です。(管理行為)
過半数の同意とは人数の割合ではなく、持分の割合が過半数との意味に注意してください。
第三者に購入してもらうのは難しい
自己持分は自身の意思で自由に売却できますが、共有持分のみの売却では買い手が見つかる可能性は低いでしょう。
なぜなら、第三者が購入したところで不動産の一部の権利しか所有できないからです。
別の共有名義者がそのまま住み続けている可能性もあるため、このケースでは購入者が住むこともできません。
そのため、個人が居住目的で購入することはないと考えたほうがよいでしょう。 共有持分を買取る不動産会社も多く存在します。しかし、買取り額は市場相場の半額程度になるのが現実です。
共有名義の不動産全体を売却するには?
共有持分のみでなく、不動産全体を売却するには以下の3つの方法があります。
それぞれの手順と、スムーズに売却するためのポイントをまとめました。
共有者全員の同意のもとで不動産を売却する
まずは、共有者全員の同意を得て不動産全体を売却する方法です。
この方法なら売却して得た現金を共有者間で割合に応じて分配できるため、トラブルなく売却できる可能性が高まります。
ただし、一人でも売却に同意しない共有者がいると不動産全体は売却できないため、慎重な話し合いが必要です。
まずは共有者が誰なのかを明確にし、費用の負担割合などを決めてから、最低売却価格を決定するのが一般的な成功のための流れです。その後、不動産会社へ相談して売却活動の開始となります。
ほかの共有者に自分の持分を売却する
不動産の全体売却に反対している共有者がいる場合は、自分の持分をほかの共有者に売却する方法で手放すことも可能です。
この方法では、買取った共有者は持分割合を高められるメリットがあるため、話し合いがスムーズに進む傾向にあります。
自分の持分を誰に売却するかは、慎重に検討しましょう。
なぜその共有者に売却することにしたかを説明できるようにしておかなければ、共有者間でトラブルになる恐れがあります。
また、逆にほかの方の共有持分を買取り、単独名義として不動産全体を売却する方法もあります。
ただし、共有者間で売買する際は、間に不動産会社に入ってもらうようにしましょう。
仲介手数料はかかりますが、適正価格の査定のほか、さまざまなトラブルを防ぐためには大切なポイントです。
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土地の場合は分筆して売却する
売却を希望している不動産が土地のみの場合は、自己持分の割合に応じて分筆し単独名義の土地として売却する方法もあります。
分筆とは、一つ(一筆)の土地を二つ(二筆)以上に分けることです。
分筆した土地は登記簿上にも記載でき、新しい地番をつけることも可能であるため、それぞれが単独で所有できます。
まずは土地の事前調査を行い、問題がなければ分筆案を作成します。
分筆案を基に役所の担当者が現地で土地の確認を行い、分筆する箇所に境界標を設置したら、必要書類を作成して実際に分筆登記を行うという流れです。
分筆した土地を売却するときはほかの共有者の同意を得る必要がないため、トラブルになる心配はありません。
共有名義の不動産売却でよくあるトラブル
共有名義の不動産を売却するにあたって、単独名義のケースにはないトラブルの発生がままあります。
よくあるトラブルの具体例をご紹介します。
共有者を把握できない
相続が繰り返され、権利関係が複雑になっている場合に多いのが「共有者が誰なのか、何人いるのか分からない」といったトラブルです。
相続登記を行わない状態で相続が繰り返されると、誰が不動産の共有者なのか分からなくなる事態が発生します。
不動産を売却するには共有者全員の同意が必要なため、ほかにどれだけ共有者がいるのか分からないときや、共有者が分かっていても所在不明などのケースでは、売却が不可能になります。
「共有者が分からない」という理由で不動産を所有し続けると、不動産を管理するための負担が大きくなったり、権利関係がさらに複雑化したりする可能性が高まるでしょう。
不動産が空き家になっている場合は、特定空き家に指定されて固定資産税が3.9倍*(東京23区)に跳ね上がったり、強制解体になったりするリスクも考えられます。
*東京23区の固定資産税評価の負担調整率は最大で65%です。6倍×0.65=3.9倍の解になります。全国どこでも6倍にはなりません。
共有持分を共有者に売却する際の売却価格で揉める
共有持分をほかの共有者に売却する場合は、売却価格をめぐってトラブルが発生しやすいため注意してください。
基本的には、不動産全体の市場価格を持分割合で割った金額を目安にします。
例えば、2,000万円の価値がある不動産の1/4の割合を売却する場合は、2,000万円×1/4=500万円が基準になります。
しかし、実際には、売却するほうはできるだけ高く、購入するほうはできるだけ安く取引したいため、双方の希望が合わず揉め事になるケースも珍しくありません。
訴訟を起こされる
共有名義の不動産では、ほかの共有者から共有物分割請求訴訟(民法第258条関係)を起こされる可能性があります。
共有者には不動産の共有形態の解消を求める共有分割請求の権利が認められており、共有者の一人が提起した場合は共有の解消に向けて対応しなければなりません。
当人同士での話し合いで解決しない場合は、管轄の地方裁判所に訴訟の提起が可能です。
訴訟を避けるためにも、共有解消の方法を早めに話し合っておくことが重要になります。
共有名義の不動産売却でよくあるトラブルの対処法
共有名義の不動産売却でよくあるトラブルについて、ケースごとに対処法をまとめました。
所在不明の共有者がいても不動産を売却できる制度を活用する
令和5年4月から、所在不明の共有者がいる場合は「所在等不明共有者持分取得制度」と「所在等不明共有者持分譲渡制度」が活用できるようになりました。
「所在等不明共有者持分取得制度」とは、裁判所に手続きすることでほかの共有者が所在不明者の持分を買取ることができる制度です。この制度を活用するためには供託金(万が一のための保証金)を用意する必要があるため、状況に応じて検討しましょう。
一方の「所在等不明共有者持分譲渡制度」は、所在不明者の持分を第三者へ売却できる制度です。
この制度は共有持分が相続財産の場合、相続開始から10年以上経過しなければ活用できないため、確認が必要になります。
不動産会社へ適正価格の査定を依頼する
売買価格をめぐってトラブルになりそうなときは、不動産会社に査定してもらい、合意形成を図る方法がおすすめです。
不動産査定とは不動産の売却予想価格の算出で、共有者間で不動産の売買を行う際に、トラブルを防止するために役立ちます。
まずは信頼の置ける不動産会社に査定を依頼し、その結果を基に大まかな売却相場を把握するとよいでしょう。
信頼の置ける不動産会社とは、素人目線でも分かりやすく査定の根拠を示し、メリットやデメリットを含めて説明してくれる会社です。
共有者の間で相場観を統一しておけば、全員が納得して取引を進められるようになるでしょう。
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共有物分割請求訴訟のデメリットを理解する
共有物分割請求によるトラブルを防止するためには、そのデメリットについて共有者全員が理解しておかなければなりません。
まず、共有解消まで時間を要するケースが多く、最低でも半年は必要です。
判決に納得しない共有者がいる場合は、さらに時間がかかるケースもあるでしょう。
また、例え訴訟を申し立てたほうの立場であっても、望んだ通りの判決が下されるとは限りません。
判決では競売になる可能性が高く、金銭的に損をするリスクがあります。こんな実情のデメリットの理解が共有できるように、事前に当事者間で十分話し合いをしましょう。
また不動産会社に依頼して、当事者全員に「デメリットの理解」が深まるように説得してもらう方法も一つの手です。
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共有名義の不動産売却を検討されるにあたって
「スムーズに売却するにはどうすればよいのか?」
「そもそも、私の共有持分の価値はどのくらい…」
などと不安に思われる方もいらっしゃるでしょう。
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まとめ
共有名義の不動産は自分が売却を希望しても、ほかの共有者の同意が得られなければ売却できません。
共有者全員の同意が得られない場合は、以下のような方法で売却することを検討しましょう。
・自分の共有持分のみ売却する
・ほかの共有者に自分の持分を売却する
・土地の場合は分筆して売却する
いずれの方法を選択してもトラブルが発生する可能性はあるため、その対処法についてもチェックしておくとよいでしょう。
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