相続税の支払いが困難に?マンション売却は不可避【タワマン節税に歯止め】

マンションの相続税が払えない時、何もせずに放置すると税負担が増えたりマンションを差し押さえられたりなど状況は悪化します。

そのため、速やかに対策を立てて支払いの目途をつけることが大切です。

本記事では、相続税の計算方法や支払い期限、未払いのリスク、控除・特例など、基礎知識を解説。

また手元に納付する現金がない場合の対処法もご紹介し、トラブルを未然に防げるようサポートします。

さらにマンションの相続税評価に影響する法改正についても取り上げます。 マンションを相続した方や、近い将来に相続の予定がある方は、本記事を読むことで事前の心構えができるでしょう。

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目次

マンションの相続税の計算方法

マンションの相続税は、以下のとおり算出します。

マンションの相続税評価額-控除額)×税率

マンションの相続税評価額とは、国税庁が決めたルールに沿って算出したマンションの価値です。

具体的には「土地の評価額」「建物の評価額」を合算して算出します。

それぞれの計算式は以下のとおりです。

土地の評価額=マンション敷地全体の評価額×持ち分割合(自身が持つマンションの敷地権割合)

建物の評価額=納税通知書に記載されている固定資産税の評価額(購入価格に0.7を掛けるとおおよその数字が出る)

土地の評価額のうち、「マンション敷地全体の評価額」は、路線価の有無によって計算方法が変わります。

※路線価とは、道路に面する土地の1平方メートルあたりの評価額。

路線価の有無計算方法
ある場合路線価×補正率(土地の事情を考慮した評価基準)×土地の面積
ない場合土地の固定資産税評価額×一定倍率(1.1であることが多い)

これらの計算式で求めた相続税評価額から、控除額(税負担を軽減するために差し引ける金額)を除いて税率をかけると、不動産の相続税が求められます。

上記の計算式は旧ルールであり、2024年1月より新ルールが実施されました(詳しくは後述)。

しかし旧ルールを知っておくと新ルールが理解しやすいため、まずは上記の内容を把握してください。

なお相続税は、マンションだけでなく、他の相続財産(現金・証券・借金など)も含めて総合的に算出します。

上記の計算は、あくまでマンションに対する相続税を計算した試算です。

マンションの相続税の支払い期限

相続税の支払い期限は、相続の開始があったことを知った日(通常は被相続人が死亡した日)の翌日から10ヵ月以内です。

申告期限も納付期限も同様です。

納付は、最寄りの金融機関や所轄税務署にて、原則的に現金納付で行います。

参照:国税庁「相続税の納付」

相続税を払わないと訪れるリスク

納付期限までに払わないと、以下のリスクがあります。

延滞税や追徴課税が発生する

・マンションが差し押さえられる

大きな経済的損失につながるため、納付は必ず期限内に行うようおすすめします。

それぞれのリスクについて解説します。

延滞税や追徴課税が発生する

期限までに相続税を申告しない、もしくは払わないと、以下のようなペナルティが発生し、税負担が増えます。

ペナルティ概要税率
無申告加算税期限までに相続税の申告をしない時に課せられる期限後に自主申告した場合:5%
税務調査通知~税務調査までに申告した場合:10%~15%(50万円超)25%(300万円超)
税務調査で指摘されてから申告した場合:15~20%(50万円超)30%(300万円超)
重加算税意図的に申告をしなかったことが指摘された場合に課せられる過少申告:35%
無申告:40%
延滞税納付期限までに納付しないと課せられる「①納付期限の翌日から2ヵ月する経過まで」と「②それ以後」とで2段階の税率が適用
税率は年度によって替わる(令和6年は①2.4%、②8.7%)
参照:財務省「加算税の概要」国税庁「延滞税の割合」

別のペナルティとして、申告期限を過ぎると、相続税を軽減するための特例や控除を利用できなくなります。

マンションが差し押さえられる

相続税を支払わないでいると、最終的にマンションを差し押さえられます。

税金の督促状が届いたり、税務署からの電話や訪問を受けたりしたあと、状況が改善しないなら、差し押さえ予告がされます。

その後差し押さえ手続きに入り、マンションの所有権は変わらずにも、支配する権利を失ってしまいます。

差し押さえられたマンションは公売にかけられ、売却額は滞納分の支払いに充てられるでしょう。

公売とは:国税庁HP

マンションの相続税を払えない時の対処法

マンションの相続税を払えない場合、以下の対策を取れます。

延納する

・物納する

・マンションの相続を放棄する

・金融機関からの借り入れる

・マンションを売却して現金化する

各対策について詳しく解説します。

延納する

延納とは、相続税を分割して払う制度です。

相続税は、原則的に現金での一括払いが求められます。

しかし例外的に、最大20年間かけての分割払いが認められます。

適用条件は以下のとおりです。

・相続税額が10万円を超えている

・納付できない事由があり、納付を困難とする金額の範囲内である

・納期限までに申請書および担保提供関係書類を提出する

・延納税額に相当する担保を提供する(延納税額が100万円未満かつ延納期間が3年以内である時は不要)

延納のメリット・デメリットをまとめました。

メリット

・納税資金が手元になくても支払いを繰り延べられる

デメリット

・担保を提供する必要がある(債券や土地、建物など)

・利子税が発生する(不動産等割合75%のケースで年1.3%)

注意点として、延納制度には審査があり、却下される可能性もあります。

参照:国税庁「相続税の延納」

物納する

物納とは、現金の代わりに物で納付する制度です。

この制度を利用すると、相続税を不動産や有価証券、動産などで代替納付できます。

適用条件は以下のとおりです。

・延納での納付も困難かつ、納付を困難とする金額を限度としている

・相続した財産で物納する

・日本国内に所在する特定の財産である

・指定された優先順位どおりに物納する

物納のメリット・デメリットには以下の点が挙げられます。

メリット

・マンションを売却せずに相続税を支払える

デメリット

・利子税がかかる

・物納する財産の評価は時価より低くなる可能性が大きい

物納についても審査があります。

参照:国税庁「相続税の物納」

マンションの相続を放棄する

相続放棄とは、被相続人(亡くなった人)から受けるはずだった財産を相続しないことです。

マンションをはじめプラスの財産(不動産、現金、債券など)と、マイナスの財産(借金、買掛金、未払い金など)をすべて放棄します。

相続放棄をすると、もともと相続人ではないとみなされるため、マンションの相続税について心配しなくてよくなります。

ただしプラスの財産がマイナスの財産を上回る場合、相続放棄するとマンション以外の貴重な財産を受け取れないことになるため、慎重に考えなければなりません。

金融機関からの借り入れる

金融機関からお金を借りる方法もあります。

相続税の納付をするのに必要な資金を借り入れ、その場をしのぐ方法です。

借り入れる際は、シンプルに資金を借りる方法もあれば、不動産売却を前提に借りる方法もあります。

この方法のメリット・デメリットは以下のとおりです。

メリット

・マンション売却前に納税用の現金を確保できる

・延納の利子より安く済む可能性がある

デメリット

・利子を支払う必要がある

・審査によっては借り入れできない

マンションを売却して現金化する

相続したマンションを売却して現金化し、そのお金で相続税を支払う方法もあります。

マンションを使用する予定がない場合や、マンション維持の手間やコストに不安がある場合は、売却する選択肢が有効です。

マンション売却のメリット・デメリットは以下のとおりです。

メリット

・マンション維持管理の負担から解放される

・支払い用現金を工面しやすい

・審査がないため実行しやすい

デメリット

・納付期限までに売却できるかどうか保証がない

・時間的制約で安値での売却を迫られる恐れもある

マンションを高値で売却できれば、相続税を支払っても手元にお金が残る可能性もあります。

売却で利益が発生すると譲渡所得税もかかりますが、軽減の特例を適用すれば節税が可能です。

不動産売却で発生する税金については、以下の記事を参考にしてください。

👉不動産売却における税金はいつ払う?支払いタイミングと節税方法を解説

マンションの相続で使える控除と特例

ここからはマンションの相続税を軽減できる控除・特例について解説します。

相続税の支払い額に不安がある方は、軽減措置について知っておくと安心できるでしょう。

なおここで解説する軽減措置は、あくまでマンションに関連した特例です。

マンションを含む相続財産の総額に適用できる「基礎控除」は含めていません。

※基礎控除額は「3,000万円+(600万円×法定相続人数)」。

配偶者の税額の軽減

配偶者の税額の軽減は、被相続人の配偶者がマンションを相続する場合に適用できます。

相続財産額が、1億6,000万円または法定相続分以下の額であれば非課税になります。

おもな適用条件は以下のとおりです。

・法律上の婚姻関係にあったこと

・遺産分割が確定していること

・相続税の申告書を提出すること

注意点として、非課税になるとしても相続税の申告は必要です。

参照:国税庁「配偶者の税額の軽減」

小規模宅地等の特例

小規模宅地等の特例は、一定要件を満たすと、相続税評価額を減額できる制度です。

つまり通常よりも課税対象額が少なくなり、相続税額が低くなります。

詳細は割愛しますが、本特例の適用ケースや適用条件はさまざまです。

例として、適用できるケースには以下のような条件があります。

・被相続人が居住していたマンションである

・被相続人が事業用に使っていたマンションである

・被相続人あるいはその親族の法人事業で使っていたマンションである

適用されると、マンション用地の評価額を50%もしくは80%減額されるため、大きな節税効果があります。

注意点として、特例を適用できる宅地の面積には限度が設けられています。

面積が大きい宅地の場合、軽減対象は一部に限定されるかもしれません。

参照:国税庁「相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」

 2024年度よりマンションの相続税評価を改正

マンションに関係する相続税を少しでも下げようと、節税対策に力を入れる方は少なくありません。

この点、節税に歯止めをかける新ルールが2024年1月より適用されているため、解説します。

マンションの相続税評価の新ルールとは?

新ルールでは、2024年1月1日以後に相続した分譲マンションの評価額計算方法が改正されました。

端的に言うと、相続したマンションの評価額が旧ルールよりも高くなり、課税対象額が増える結果になります。

これまで、分譲マンションの評価額は、実際の価値よりも低く評価額が計算される状態にありました(特に高層マンション)。

ケースにもよりますが、時価の3~4割ほどにまで下がることも少なくありません。

詳細は割愛しますが、これは、「固定資産税評価額」が、時価よりも数割安く設定されることと関係します。

また多くの部屋を持つマンションの場合、土地の評価額が戸数で分割されることにも起因します。

現金で1億円相続すると相続税評価額は1億円ですが、時価1億円のマンションで相続すると評価額はずっと安くなる状態でした。

そのため多くの方が、マンションを購入して相続税の節税を図っていました(いわゆる「タワマン節税」)。

しかし新ルールの導入により、タワマン節税の効果が薄れることになります。

タワマン節税に歯止め

新ルールでは、旧ルールの計算方法に「評価乖離率」「評価水準」が加わり、以下の計算式が適用されます。

旧ルールの相続税評価額×マンション1室の評価乖離率×0.6(評価水準)

これらの指標により、旧ルールで計算した相続税評価額と時価の間に1.67倍以上の差がある場合、乖離率が低くなるよう補正されます。

具体的には、旧ルールでは時価の3~4割ほどだった評価額が、新ルールでは6割程度にまで引き上げられることになりました。

新ルールはタワマンに限らず中層マンションも少なからず影響がありますが、高層マンションほど打撃を受けます。

とはいえ、まったく節税効果がなくなるわけではありません。

相変わらず現金と比べれば、マンションで相続するほうが相続税評価額を下げられることには変わりません。

いずれにしても、旧ルールや新ルールに関連して考慮すべきポイントや詳細はほかにも多くあります。

そのため購入・売却時には、不動産会社のサポートを受けることが望ましいです。

相続マンションは売却がおすすめ

相続税を払えない恐れがあり、かつマンションを手元に残すべき明確な理由がないなら、売却がおすすめです。

売却せずに相続税を払おうとすると、手元にある資金から捻出しなければなりません。

現金やその他資産価値の高い相続財産があればまだしも、自己資金のみで納付するのはハードルが高いでしょう。

さらに相続税納付後も、固定資産税や都市計画税、維持費の支払いが待っています。

自分が住むか大きな家賃収入を期待できる場合は別として、特に活用方法がないのであれば、売却が視野に入ってきます。

信頼できる不動産会社のサポートを受ければ、相続税納付期限までにスピード感をもって売却できる可能性が高いです。

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マンションは売り時?

近年マンション価格は、好立地であれば全国的に上がってきています。

国土交通省の調査によると、マンション(区分所有)の不動産価格指数は右肩上がりで推移しています。

2010年の指数を100とした場合、2023年の指数は192.1に達しました。

中古マンション市場は活発になっており、2024年現在、売却を考えるのによいタイミングと言えるでしょう。

参照:国土交通省「不動産価格指数(令和5年8月・令和5年第2四半期分)を公表」

東京都における不動産市場の現況については、以下の記事で解説しています。

まとめ

マンションの相続税を払えない場合、手元にマンションを残したければ、延納や物納・金融機関からの借り入れを検討できます。

しかしマンションを維持する必要性がない場合は、相続放棄や売却が視野に入ってきます。

相続財産全体を調べて、マイナス財産が多いなら相続放棄、プラスの財産が多いなら売却など、慎重に判断して決めてください。

全国的にマンション価格が上昇している現在、信頼できる不動産会社とタッグを組んで動けば、よい条件でスピーディーに売却を進められます。

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この記事を書いた人

大学卒業後、大手不動産仲介会社に就職。
5年間勤めた後、建売会社で2年間仕入れ営業を経験した後に、クルーズカンパニーへ入社。
主に広報活動や執筆活動を担当しています。
出身地:群馬県
家族:妻 長女 長男
趣味:キャンプ カメラ 釣り

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