転勤や転職などの理由から、分譲マンションのマイホームを「賃貸するか」、「売却するか」で迷っている方もいるかもしれません。賃貸に出せば毎月家賃収入が手に入るため、魅力に感じる方も多いでしょう。しかし、借り手がつかなければ収入は得られませんし、場合によっては赤字になってしまうケースもあります。そう考えると、売却したほうがいいと考えることも自然なことです。
この記事では保有マンションを貸し出すメリット・デメリットや賃貸方法、利益を出すコツについて詳しく解説します。注意点も紹介するので、マンションの扱いに失敗したくない方は参考にしてください。
マンションを賃貸することで儲かる仕組み
マンション賃貸で収益を手に入れるために、最初にマンションを貸すと儲かる仕組みについて理解しておきましょう。マンション賃貸も一般的なビジネスとおなじく、「収益(売上) – 費用(経費) = 利益」という仕組み自体は変わりません。 収益と費用の内訳は、次のとおりです。
マンション賃貸でかかる支出例 | マンション賃貸における収入例 |
---|---|
<マンション所有でかかる費用> マンション管理費 修繕積立費 火災保険料・地震保険料 固定資産税・都市計画税 融資返済 ローン金利 <賃貸にかかる費用> 仲介手数料 管理手数料(家賃回収や顧客対応など) | 家賃(毎月) 礼金(契約時) 更新料 |
ハウスクリーニング |
毎月の家賃や礼金・更新料から、マンションを所有することでかかる費用・マンションを貸し出すことでかかる費用の双方を差し引いた差分が「利益」です。なお、帳簿上の「利益」と自分の手元に残る「儲け(キャッシュフロー)」は異なるため注意しなければなりません。
帳簿上は黒字(利益が出ている)にも関わらず、手元に現金が残らないケースもあれば、帳簿上は赤字にも関わらず手元には現金が残るケースもあります。このような差が生まれる原因は、「借入金返済額」と「減価償却費」です。
融資を受けてマンションを購入している場合は、毎月ローン返済しなければなりません。このときの借入金返済額は支出ではありますが、金利部分以外は経費にならないのです。融資を組んだときに借りたお金が「売上」とならないように、ローンの返済額も「費用」とはなりません。
一方、不動産を含む償却資産の取得金額は、単年で計上するのではなく一定期間にわたって毎年決められた配分額を計上します。これが減価償却です。たとえば4,700万円の区分マンションを購入したとしても、その年に全額を経費計上できません。
住宅用鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造の建物は耐用年数が47年とされているため、4,700万円を耐用年数47年で分配した100万円を毎年経費として計上します。減価償却費は実際の支出ではありませんが経費計上できるため、会計上の利益を圧縮できることが特徴です。
ここまでの情報をまとめると、帳簿上(会計上)の利益とキャッシュフローは次のように計算できます。
会計上の利益 | キャッシュフロー |
---|---|
総収入 – (減価償却費 + その他経費 + 税金) | 総収入 – (減価償却費 + その他経費 + 税金) |
たとえば、借入金返済額が減価償却費よりも多いと、会計上は利益が出ているにも関わらず手元に現金が残らない状態に陥ってしまいます。そのため、収益計算時には注意してください。逆に減価償却費のほうが借入返済額よりも多ければ、会計上は赤字となるため税負担を減らせるうえに、手元には現金が残るため資金繰りが楽になります。
住宅ローン返済中のマンションは貸し出し不可
マンション賃貸は、だれにでもできるわけではありません。前提知識として、もし「住宅ローン」を利用して分譲マンションを購入している場合は、基本的に他人へ貸し出せないことは覚えておきましょう。住宅ローンは、「ローン契約者が住むための住宅の購入」を目的とした融資です。賃貸に出すとローン契約者以外が居住することとなり、住宅ローン契約に違反してしまいます。
もし住宅ローン返済中の分譲マンションを貸し出していることが金融機関に伝わると、違約金・ローン残債の一括返済が求められるため注意してください。長期転勤や転職を機に住宅ローン返済中のマンションを貸したい場合は、不動産賃貸経営に利用できる賃貸物件用の融資に切り替える必要があります。 ただし、介護や一時的な転勤など金融機関が認める特別な事情があるケースでは、住宅ローンを継続しながらマンションを貸し出せる可能性もゼロではありません。住宅ローン返済中の物件を貸し出すことによるトラブルは近年増加しているため、十分注意してください。
マンションを貸し出すメリット
マンションを貸し出せば、副収入を得られると考えている方も多くいらっしゃるでしょう。家賃収入を期待できることも含めて、マンションを貸し出すメリットとしては次のような例が挙げられます。
- 家賃収入を得られる
- インフレリスクに強い資産になる
- 他人資本を利用して資産総額を増やせる
- 減価償却による節税効果が期待できる
- 建物の劣化を防げる(リロケーション)
これらのメリットに魅力を感じる方は、マンション売却ではなく賃貸を選んでもいいでしょう。それぞれのメリットについて詳しく解説します。
家賃収入を得られる
最大のメリットとしては、毎月家賃収入を得られることが挙げられます。賃貸管理を業者に委託してしまえば、物件オーナーとしてほとんど手間をかけることなく副収入を得られることがポイントです。
一般的な副業は会社員として働きつつ、副業先の業務もこなす必要があります。そのため、身体的な負担になりやすいですが、マンション賃貸であれば労力をかけずに収入額を増やせます。
インフレリスクに強い資産になる
マンションをはじめとする不動産は、他人資本を利用して資本総額を増やせることもメリットです。たとえば、株式や投資信託であれば、基本的に自己資本のみを使って投資しなければなりません。
しかしマンションを購入するときは、銀行からの融資(他人資本)を利用しています。たとえば、自己資金500万円・銀行からの融資3,000万円で資産価値3,500万円の分譲マンションを購入している場合、自己資本の7倍もの資産を手に入れたことになります。
さらに、マンション賃貸に特化した計算も見てみましょう。たとえば、自己資金が3,000万円あるとします。販売価格3,000万円・表面利回り4%の分譲マンションを購入の場合、年間家賃収入は120万円です。
一方、自己資金3,000万円と借入2,000万円で販売価格5,000万円・表面利回りは同じく4%の分譲マンションを購入した場合、年間家賃収入は200万円です。自己資金額・利回りは同じでも、銀行融資という他人資本を入れると収入を増やせることが不動産ならではのポイントです。このように、他人資本を利用して利益を得られることは「レバレッジ効果」といわれています。
なお、他人資本を入れる場合は金利返済も必要なため、実際の収益性は金利に影響されることも覚えておきましょう。たとえば、単純な計算例を紹介すると、収益利回り5%・返済金利2%であれば3%分の利益が期待できますが、収益利回り2%・返済金利5%であれば他人資本を入れると損することになります。(実際の収益計算は空室率や修繕経費なども加味するため、さらに複雑です)
他人資本を利用して資産総額を増やせる
マンションをはじめとする不動産は、他人資本を利用して資本総額を増やせることもメリットです。たとえば、株式や投資信託であれば、基本的に自己資本のみを使って投資しなければなりません。
しかしマンションを購入するときは、銀行からの融資(他人資本)を利用しています。たとえば、自己資金500万円・銀行からの融資3,000万円で資産価値3,500万円の分譲マンションを購入している場合、自己資本の7倍もの資産を手に入れたことになります。
さらに、マンション賃貸に特化した計算も見てみましょう。たとえば、自己資金が3,000万円あるとします。販売価格3,000万円・表面利回り4%の分譲マンションを購入の場合、年間家賃収入は120万円です。
一方、自己資金3,000万円と借入2,000万円で販売価格5,000万円・表面利回りは同じく4%の分譲マンションを購入した場合、年間家賃収入は200万円です。自己資金額・利回りは同じでも、銀行融資という他人資本を入れると収入を増やせることが不動産ならではのポイントです。このように、他人資本を利用して利益を得られることは「レバレッジ効果」といわれています。
なお、他人資本を入れる場合は金利返済も必要なため、実際の収益性は金利に影響されることも覚えておきましょう。たとえば、単純な計算例を紹介すると、収益利回り5%・返済金利2%であれば3%分の利益が期待できますが、収益利回り2%・返済金利5%であれば他人資本を入れると損することになります。(実際の収益計算は空室率や修繕経費なども加味するため、さらに複雑です)
減価償却による節税効果が期待できる
先述した「減価償却」には、節税効果が期待できることもメリットです。記事冒頭で減価償却費により会計上は赤字となるものの、現金は手元に残るケースがあることを紹介しました。不動産所得の損失(赤字)は、黒字の他の所得、たとえば事業所得や給与所得から差し引けます。(損益通算)
減価償却費は実際に支出しているわけではないため、手元に現金を残し、なおかつマンションという現物資産を保有しながら節税できることは覚えておきましょう。ただし、減価償却による節税効果は、あくまでも収益物件を保有したときの副次的なメリットです。節税目的のみでマンションを保有すると、純粋な赤字が発生しキャッシュアウトする可能性もあるため注意してください。
建物の劣化を防げる(リロケーション)
急な転勤で引越しをするものの、一定期間後には戻ってくることが分かれば、住宅ローンを契約したままマンションを貸し出せるケースもあります。
このように一時的な転居に伴ってマンションを貸し出す場合は、建物の劣化を防げることもメリットの一つだといえるでしょう。
建物は人が住まなくなると、空気が循環しなかったり設備を使わずに放置したりすることを要因に急速に傷んでいきます。そのため、数年の転勤から戻ってくると、想像以上に部屋が劣化しているケースも珍しくありません。
留守期間中に限りだれかに暮らしてもらえれば、建物の劣化を防げることも覚えておきましょう。
なお、一時的な留守宅を定期借家契約で貸し出すことを「リロケーション」と呼びます。ただしリロケーションの場合は、通常の賃貸契約より家賃が低めに設定されることが多いです。
リロケーションを活用する際は収益性を求めるのではなく、あくまで留守宅管理を主目的としたほうがいいでしょう。急な転勤で引越しをするものの、一定期間後には戻ってくることが分かれば、住宅ローンを契約したままマンションを貸し出せるケースもあります。
このように一時的な転居に伴ってマンションを貸し出す場合は、建物の劣化を防げることもメリットの一つだといえるでしょう。
建物は人が住まなくなると、空気が循環しなかったり設備を使わずに放置したりすることを要因に急速に傷んでいきます。
そのため、数年の転勤から戻ってくると、想像以上に部屋が劣化しているケースも珍しくありません。
留守期間中に限りだれかに暮らしてもらえれば、建物の劣化を防げることも覚えておきましょう。
なお、一時的な留守宅を定期借家契約で貸し出すことを「リロケーション」と呼びます。
ただしリロケーションの場合は、通常の賃貸契約より家賃が低めに設定されることが多いです。
リロケーションを活用する際は収益性を求めるのではなく、あくまで留守宅管理を主目的としたほうがいいでしょう。
マンションを貸し出すデメリット
マンションを貸し出すことにはメリットも多いですが、次のようなデメリットがあることも知っておきましょう。
- 空室リスクがある
- 想定以上に修繕費・クリーニング費がかかることもある
- 住宅ローンより賃貸不動産融資のほうが金利は高い
- 変動金利の融資では金利上昇リスクもある
- リロケーション(定期借家契約)だと賃料が安い
これらのデメリットを知らずにマンションを貸し出すと、最終的に融資を返済できない事態に陥る可能性もあります。それぞれのデメリットも勘案し、リスクコントロールできないと感じた場合は、マンション売却も視野に入れたほうが安心です。以下ではデメリットと対策について解説します。
空室リスクがある
マンションを貸せば家賃収入を得られますが、入居する人がいなければ収入はありません。入居者がおらず、家賃収入がない期間もローン返済は続きますし、客付けのための広告費用がかかるケースもあります。このような空室リスクにより、想定上に赤字が膨らむ可能性があることも覚えておく必要があります。
空室リスクを抑えるためには、マンション立地や家賃設定が重要なのはもちろんですが、客付け能力の高い不動産会社に仲介依頼しなければなりません。仲介依頼の契約方式にも種類があるため、記事後半で詳しく解説します。
想定以上に修繕費・クリーニング費がかかることもある
想定以上に修繕費・クリーニング費がかかることで、赤字になってしまうケースも珍しくありません。自己保有する分譲マンションを貸し出す以上、設備や建具の修繕は持ち主が負担しなければなりません。お風呂やトイレ、エアコンなどの設備は定期的な交換も必要となるため、あらかじめ修繕費を積み立てておいたほうが安心です。
また、想定以上に入退去が繰り返されると、その都度ルームクリーニングや壁紙の張替なども対応しなければなりません。転勤族が入居している際は数年後のルームクリーニング費を見込んでおくなど、計画的な予算管理が重要です。
住宅ローンより賃貸不動産融資のほうが金利は高い
住宅ローンから賃貸不動産用の融資に切り替えて貸し出すケースでは、金利が上がることもデメリットです。住宅ローンは契約者が暮らす住居の取得に使われるという特性上、非常に低金利に抑えられています。一方、賃貸不動産用の融資は、一種の事業用融資です。収益性や担保価値によって金利は左右されるため、住宅ローンより金利を高く設定している金融機関が多いです。
金利が高くなれば、それだけ毎月の返済額も上がります。融資条件を交渉し、なるべく低金利で借り入れることを意識してみてください。分譲マンションを貸し出すことでどれくらいの利益が見込めるのか、つまり滞りなく返済できるのかを示すことが重要です。
変動金利の融資では金利上昇リスクもある
変動金利で融資を組む場合、返済途中で金利が上昇するリスクもあります。近年はマイナス金利政策が続いていたこともあり、賃貸不動産用融資の金利も低水準に抑えられていました。しかし、2024年3月19日の金融政策決定会合で日銀が17年ぶりの利上げ(マイナス金利政策の解除)に踏み切ったことで、今後は融資金利の上昇が予想されます。
利上げ幅は小規模であるため短期的、かつ大幅な金利上昇は見込めませんが、今後は金利上昇トレンドとなる可能性は留意しておきましょう。変動金利で借り入れる場合は、金利上昇リスクを考慮した返済計画を立ててください。金利上昇リスクを排除したい場合は、固定金利での借入も選択肢となるでしょう。(ただし固定金利のほうが変動金利よりも高水準です)
リロケーション(定期借家契約)だと賃料が安い
分譲マンションを貸し出すメリットでも紹介したリロケーション(定期借家契約)を利用する場合、周辺相場よりも賃料が安くなることもデメリットです。ローン返済額を加味すると、赤字になるケースも珍しくありません。
もし収益性を重視する場合は定期借家契約ではなく、普通借家契約を結んだほうがいいでしょう。普通借家契約でも利益が見込めない場合は、売却することも選択肢の一つです。もっとも、リロケーションであれば家賃収入を住宅ローン返済に充当できるため、いずれは戻ってきたいと考えている方であれば、たとえ多少の赤字になったとしてもマンションを貸し出すことをおすすめします。
マンションを貸し出す時の契約形態
一口に「不動産を貸す」といっても、その契約方法には種類があることをご存知でしょうか。マンション賃貸で一般的な契約の形は次の3種類です。
- 普通借家契約
- 定期借家契約
- サブリース契約
それぞれ特徴やメリット・デメリットが異なるため、それぞれの制度概要を理解してから契約しましょう。
普通借家契約と定期借家契約の違い
まずは、「普通借家契約」と「定期借家契約」の違いについて解説します。
種類 | 普通借家契約 | 定期借家契約 |
---|---|---|
契約期間 | 1年以上で設定 (2年契約が一般的) 1年未満の契約期間を定めると「期間の定めのない賃貸借契約」とみなされる | 制限なし |
契約更新 | 可能 | 不可 |
貸主からの中途解約 | 基本的に不可 (中途解約・更新拒絶には正当事由が必要) | 特約を締結できる |
借主からの中途解約 | 特約で定まっていれば可能 | 床面積200㎡未満の物件であれば、やむを得ない事情発生時に可能 |
多くの賃貸物件では、普通借家契約が結ばれています。普通借家契約は更新可能な契約方法で、解約手続きをしない限りは同一条件で契約が続くことが特徴です。 契約期間は1年以上で設定できますが、多くの賃貸物件では「2年」契約となっています。なお、1年に満たない契約期間を定めると「期間の定めのない賃貸借契約」とみなされ、両当事者がいつでも解約を申し入れられる状態になるため注意してください。
解約については、貸主・借主側で扱いが異なります。借主が物件利用を希望している場合、貸主の中途解約・契約満了時の更新拒絶は認められません。貸主から解約・更新拒絶を希望するためには、物件を自ら使用しなければならない「正当事由」が求められます。借主からの解約については、特約を定めていれば可能です。解約希望の予告期間などを定めておくといいでしょう。
定期借家契約は、先述したリロケーションなどで利用されています。定期借家契約の場合は契約更新がなく、契約期間満了時に賃貸借契約が終了することが最大の特徴です。そのため貸主が転勤などを理由に一定期間だけ使用しない物件を貸し出すときには、定期借家契約が向いています。(定期借家契約であれば、住宅ローンを契約したまま賃貸することを認めてくれる金融機関も多いです)
ただし、定期借家契約を結ぶためには、期間満了により契約が終了することを契約書とは別書面で借主に交付しなければなりません。この書面交付を怠っていると定期借家契約は認められず、普通借家契約を締結していることになります。普通借家契約となると貸主側からの契約終了は非常に困難なため、マンションを貸し出すときは十分に注意してください。
サブリース契約
さて、マンション保有者と居住者が直接契約する方法以外に、マンション保有者が不動産会社(サブリース業者)と賃貸借契約を結び、その不動産会社が居住者に転貸(又貸し)するケースもあります。この形態を「サブリース契約」といい、メリット・デメリットは次のようなものがあります。
メリット
- 空室リスクがない
- 毎月一定の家賃収入が見込める
- 広告費や原状回復費はサブリース業者が負担してくれる
デメリット
- サブリース賃料は周辺相場より低い
- 契約更新時に賃料交渉が入る
- サブリース契約を中途解約されることもある
サブリースは不動産会社が物件を借りる形態のため、たとえ空室だったとしても、不動産会社から家賃収入(サブリース料金)を受けとれます。空室リスクはサブリース業者が負担し、自分は毎月一定の家賃収入が見込めることは大きなメリットです。また、客付けのための広告費や、入退去時の原状回復費はサブリース業者が負担します。
しかし、サブリースでは不動産会社が入居者へ転貸するため、マンション保有者と不動産会社との間の賃料は周辺相場より低く抑えられます。そのため、入居者へ直接貸し出すケースと比べると、収益性が低下することは覚えておきましょう。
また、サブリース契約では契約更新時に賃料交渉が入り、入居状況によっては大幅な減額を求められることもあります。賃料の見直し内容によっては、赤字になる可能性も留意しておきましょう。
また、あまりにも入居者がみつからないと、不動産会社からサブリース契約の中途解約を求められる可能性もゼロではありません。毎月の入金を見込んでいたサブリース料金が途絶えると融資返済が滞ることもあり、中途解約はサブリース契約でもっとも警戒すべき要素ともいえます。
なお、このサブリース契約についても「普通借家契約」と「定期借家契約」のどちらかで契約することになります。通常のサブリース契約は、普通借家契約です。2年ごとの契約更新とするケースが多く、契約更新時には賃料改定を要求されるかもしれません。また、途中解約を申し入れられるリスクもあります。反対に、もしサブリース業者の対応が気に入らないとしても、貸主側から契約終了を申し入れられません。
定期借家契約でサブリース契約を結べば中途解約リスクを排除でき、契約が終了すれば物件を返してもらえます。その代わり、契約終了後はサブリース料金の入金がなくなることは留意しておきましょう。サブリース契約は上手く使えば空室リスクから解放されますが、メリット・デメリットを理解したうえで契約しましょう。
マンションを貸し出す流れ
マンションを貸し出すことを決意した方のために、家賃で収入を得るまでの流れについても紹介していきます。一般的な貸し出しフローは次のとおりです。
- 契約方法を決める
- 仲介不動産会社を決める
- 賃貸管理方法を決める
- 入居者を募集する
- 賃貸契約を交わす
それぞれのステップごとに、概要や注意点を紹介します。
契約方法を決める
先述したとおり、マンション賃貸で一般的な契約方法は次の3種類です。
- 普通借家契約
- 定期借家契約
- サブリース契約
どの形態を利用するべきなのかは、マンションを貸し出す目的・周辺の賃貸需要によっても異なります。そのため、この記事で紹介した内容を参考にご自身で考えてみてください。基本的に、分譲マンションを収益物件として運営していくとしたら普通借家契約、転勤などを理由に一時的に貸し出したい場合は定期借家契約がおすすめです。
仲介不動産会社を決める
契約方法を決めたら、入居者を探さなければなりません。一般的には、不動産会社に仲介(媒介)を依頼するケースが多いです。物件周辺エリアに店舗があり、営業力が強い不動産会社に依頼すると空室リスクを抑えられます。
賃貸管理方法を決める
入居者が暮らし始めたあとの物件管理方法についても決めなければなりません。サブリースであれば、サブリース業者が管理も対応します。入居者と借家契約を直接締結する場合は、次のどちらかを選ぶことになります。
- 自主管理
- 委託
自分で物件管理や家賃回収、トラブル対応なども対応するのが自主管理です。管理委託費用は抑えられますが、賃貸経営業の経験がない方がすべて自分で対応するのは難しいでしょう。 賃貸管理全般を不動産会社に任せる委託形式であれば、毎月一定の管理委託費を支払うことであらゆる業務に対応してもらえます。分譲マンションの貸し出しであれば、委託のほうがおすすめです。
入居者を募集する
仲介と物件管理の依頼先が決定後、入居者の募集を開始します。不動産会社に依頼すれば客付けはもちろん、内見や契約書作成も任せられるため、自分の時間を使って対応する作業はほとんどありません。
賃貸契約を交わす
入居希望者が見つかったら、賃貸契約を結びます。普通借家契約を結ぶと貸主の希望で入居者を退去させることはほぼ不可能であるため、契約内容・入居希望者情報はあらかじめ確認しておきましょう。
また、不動産会社の仲介手数料については、宅地建物取引業法において貸主・借主それぞれ0.5か月分が上限とされています。承諾を得ている場合は貸主・借主のうち片方が1か月分を負担することも可能です。このため実務的には、借主が仲介手数料1か月分を負担し、貸主は別途広告料を支払うことも少なくありません。
マンション賃貸で利益を出すコツ
マンションを貸し出すならば、なるべく利益を残したいと思うでしょう。マンション賃貸で利益を出すためには、次のコツを意識してください。
- 事前にシミュレーション(キャッシュフロー計画)を立てる
- 金利を低く抑える
- 空室対策をはじめとしたリスクを管理する
- コストを抑える
それぞれ具体的に解説するため、ご自身のマンションに置き換えながら考えてみてください。
事前にシミュレーション(キャッシュフロー計画)を立てる
まずはマンションを貸し出すことで、いくら儲かるのか(そもそも儲けが出るのか)をシミュレーションします。ここでいう儲けとは会計上の利益ではなく、キャッシュフローのことです。もしキャッシュフローがマイナスになる場合は、マンションを貸し出すことで不足する資金をどこかから捻出しなければなりません。マンションを貸し出すか否かを判断するためにも、事前のキャッシュフロー計画は非常に重要です。
まずは、毎月の収入(家賃収入など)と支出(融資返済額や管理委託費など)を、年間通じて書き出してみてください。どこかの月でマイナスになるとしたら、補填方法を考えなければなりません。また、仮に空室になった場合、どこまで耐えられるのか知ることも重要です。
また、賃貸物件の集積性では「利回り」が重視されますが、この利回りにも種類があります。
表面利回り | 年間収入 ÷ マンション購入価格 × 100 |
---|---|
実質利回り | (年間収入 – 年間経費) ÷ (マンション購入価格 + 購入時諸経費) × 100 |
たとえば、4,000万円で購入したマンションの家賃が10万円(年間収入120万円)の場合、表面利回りは「120万円 ÷ 4,000万円 × 100 = 3%」と計算できます。
しかし、年間経費が20万円かかり、なおかつ購入時の諸経費(仲介手数料など)が200万円かかっているとしたら、実質利回りは「(120万円 – 20万円) ÷ (4,000万 + 200万円) × 100 = 100万円 ÷ 4,200万円 × 100 = 2.3%」です。
このように購入価格と家賃収入だけで計算する「表面利回り」では、正確な利回りは求められません。物件の収益性を見るためには修繕積立金や管理手数料、各種税金なども加味した「実質利回り」で計算してください。
金利を低く抑える
マンション賃貸で儲けをだすために肝となるのは、毎月の「融資返済額」です。融資返済額が少なければ、それだけ毎月の資金繰りに余裕が出ます。そして融資返済額を左右するのが「金利」です。たとえば、融資期間30年として融資金額の借入額を比べてみると、金利によって毎月の返済額はこれだけ変わります。
借入額 | 金利 0.5% | 金利 1.0% | 金利 2.0% | 金利 3.0% |
---|---|---|---|---|
3,000万円 | 89,756円 | 96,491円 | 110,885円 | 126,481円 |
4,000万円 | 119,675円 | 128,655円 | 147,847円 | 168,641円 |
5,000万円 | 149,594円 | 160,819円 | 184,809円 | 210,802円 |
融資期間30年の融資でも、金利が1%変われば毎月の返済額が数万円単位で変化します。この返済額を毎月の家賃収入でまかなえるかどうかがマンション賃貸の儲けを左右するため、可能な限り金利を低く抑えることが重要です。
もし高金利の融資しか組めないとしても、1部屋あたりの家賃を数万円値上げすることは現実的ではありません。そのため融資金利によっては、マンション賃貸ではなく売却したほうが儲かるケースもあります。
なお、融資を受ける金融機関によって金利水準が異なることも覚えておきましょう。一般的に都市銀行のほうが金利は低く、ノンバンクは高金利です。
借入先 | 都市銀行 | 地方銀行 | 信用組合・信用金庫 | ノンバンク |
---|---|---|---|---|
金利水準 | 1~2% | 1.5~5% | 2~3% | 3%~ |
ご自身の給与所得が高く、マンションの担保価値も高ければ、都市銀行で有利な条件で融資を組めるケースも少なくありません。反対に給与水準が低く担保価値も低いようなマンションであれば、高金利なノンバンクでしか融資されない可能性もあります。
地方であれば、地元の地方銀行・信用組合・信用金庫に相談してみてください。金利のことも鑑みると、都市銀行→地方銀行→信用組合・信用金庫→ノンバンクの順番に相談することが望ましいです。
空室対策をはじめとしたリスクを管理する
シミュレーションどおりにキャッシュフローを生み出すためには、毎月家賃が入ってくることはもちろん、イレギュラーな出費をなるべく抑えなければなりません。そのため、マンション賃貸では空室対策をはじめとしたリスクを管理する能力も求められます。
とくに家賃収入が途絶えてしまう空室リスクは、重点的に対策すべきです。客付け力のある不動産会社へ仲介依頼することはもちろん、内装をリフォームして差別化したり、家賃を適正価格に設定したり、空室対策として考えられることは網羅しておきましょう。
コストを抑える
空室対策としてリフォームを挙げましたが、コストをかけすぎても儲けが減ってしまいます。固定資産税・都市計画税などは変えられませんが、内装費や修繕費は工夫すれば削減できるコストです。コストを抑えつつ利益を最大化するために、賃貸管理に慣れた不動産会社に相談してみてください。コストを抑えられれば、実質利回りが改善します。
マンションを賃貸するか売却するかの判断ポイント
結局のところ、分譲マンションは「賃貸」、「売却」のどちらが儲かるのでしょうか。貸し出すか売り出すか決めるときは、次のポイントを参考にしてみてください。
- エリアの賃貸需要
- 物件の資産価値
- 金利
たとえば、マンションが立地するエリアに賃貸需要が多ければ、貸し出したほうが儲けられる可能性が高いです。もし売却するとなっても、実需物件としてはもちろん、不動産投資物件としての需要も考えられるため、売り急ぐ必要はないでしょう。
一方、人口減少や周辺の教育機関・企業などの動向から賃貸需要の減少が予想される場合は、賃貸ではなく売却したほうが利益を得られると考えられます。賃貸需要が少ないエリアであっても、買主の居住を目的とした実需物件としては売却できるかもしれません。
また、金利上昇局面においては、住宅ローンから事業用ローンに借り換えると金利条件が悪く、賃貸物件としては収益を出せない可能性もあります。この場合も、住宅ローンでの購入を検討している方へ売却したほうが儲けられるでしょう。
マンションを賃貸するか売却するかの判断ポイントは多岐にわたるため、悩んでいる方はそのエリアの事情に詳しい不動産会社に一度相談してみてください。
マンション賃貸の注意点
マンションを貸し出す場合は、とくに次の点に注意してください。
- 銀行担当者に融資相談する
- 家賃相場は自分でも調査する
- 管理業務の委託内容・料金体系を確認する
それぞれの注意点について詳しく解説します。
銀行担当者に融資相談する
住宅ローンを使ってマンションを購入している場合は、一括返済などのトラブルを避けるために貸し出し前に銀行担当者に事情を説明してください。金融機関側の判断によっては住宅ローンの継続が認められるケースもありますが、基本的には事業用ローンへの切り替えが求められるでしょう。利益を出すために重要な金利についても、銀行担当者と交渉してみてください。
家賃相場は自分でも調査する
不動産会社に仲介・管理を依頼すると、おすすめの家賃設定額を提案してくれるかもしれません。しかし、本当にその家賃が適正額かどうかは、自分でも家賃相場を調査したうえで判断してください。
インターネットでマンション周辺の賃貸物件を調べれば、おおむねの家賃相場が分かります。もしかしたら不動産会社が提案した家賃よりも、高い水準で貸し出せるかもしれません。
管理業務の委託内容・料金体系を確認する
管理業務を委託するときは、委託内容・料金体系も確認しましょう。管理手数料の相場は家賃の収入のおおよそ5%くらいです。しかし、家賃集金代行だけの対応で家賃収入の5%を請求されるとしたら、割高だといえるでしょう。委託内容に、下記の業務が含まれているか確認してみてください。
- 契約更新の管理
- 家賃集金・督促など
- 退去手続き
- 原状回復作業
- クレーム対応
- 建物巡回・点検
- トラブル時の初期対応
管理手数料が安すぎると、対応範囲が狭い可能性があることも注意点の一つです。
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まとめ
マンションを貸して儲けるためには、家賃収入が各種費用を上回る必要があります。家賃を高く設定すればシミュレーション上は利益が出るかもしれませんが、入居者を獲得できなければ絵に描いた餅になってしまうため注意してください。適正な家賃額にしつつ、賃貸物件として利益を残すためには、低金利な融資を組む必要があります。
また、マンションを売却するのか賃貸するのかの判断については、融資金利と合わせて周辺の賃貸需要・今後の人口動態なども加味して考えなければなりません。もし保有マンションの扱いに悩んでいる場合は、不動産会社に問い合わせ・相談してみるとよいでしょう。
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