不動産売却の際には、翌年に確定申告の手続きが欠かせません。
しかし多くの方にとって、税制関連の規則の理解や手続きは複雑で分かりづらい作業です。
くわえて、期限も限られるためほとんどの方が面倒と思い、専門家に依頼するのではないでしょうか。
本記事では不動産売却後の確定申告にスポットを当て、自分でもできる手続きの手順やポイントを分かりやすく解説します。
確定申告にかかわる費用と税金の節約、読者が直面するであろう潜在的な疑問や悩みの解決にも対応しています。
専門家ではなくとも、このガイドを通じて確定申告の手続きをスムーズに進め、費用の節約と節税を得られるでしょう。
不動産を売却したら翌年に確定申告が必要?
確定申告は、必要なケースもあれば不要なケースもあります。
不動産売却に関する税金は所得税法「譲渡所得:第三十三条」に基づいて課税されますが、申告漏れによるペナルティを防ぐために、基礎知識を得ておきましょう。
確定申告が必要なケース
不動産を売却して譲渡所得(利益)が出る場合のみ、原則として確定申告が必要です。
不動産の取得費用と売却にかかる費用よりも、売却益のほうが高ければ譲渡所得となり、確定申告しなければなりません。
例えば3,000万円で取得した不動産を120万円の販売経費をかけ4,000万円で売却した場合は、880万円の利益を得るため、確定申告が必要です。
確定申告が不要なケースも申告すべき理由
不動産を売却しても利益が出なければ、確定申告は不要です。
しかし、確定申告することで節税できる可能性があります。
代表的なケースは、不動産売却で損失が出た方に、給与所得など他の所得がある場合です。
実は条件を満たせば、売却損失は他の所得と損益通算(益と損を相殺すること)ができます。
例えば不動産売却で400万円の損が出た方に、給与所得が400万円あるとしましょう。
この場合、確定申告しておけば、損と利益が相殺され課税所得が「ゼロ」になります。
また不動産売却に関しては、後述するさまざまな特例もあり、おのおの節税が可能です。ここで注意したいのは、特例を適用して節税するには確定申告が必須になることです。
参照:国税庁「損益通算」
自分でもできる!確定申告の4つのステップ
①売却した利益を確定する
最初のステップは、不動産売却で出た利益を計算し確定することです。
そのためには、以下の項目をしっかりと把握しておきましょう。
・取得費:土地や建物を買ったときの費用(不明な際は、売却金額×5%)
仲介手数料・登録免許税・不動産取得税・印紙税も含む
・減価償却費:経年による不動産価値の目減り分
減価償却費(定額法)= 建物購入代金など×90%×償却率×経過年数
・売却に要したコスト(譲渡費用):仲介手数料・印紙税・測量費・ローン繰上げ手数料など
譲渡所得の計算方法
譲渡所得=譲渡収入金額-[(取得費-減価償却費)+譲渡費用]
計算を間違って少ない額を申告したり申告しなかったりすれば、ペナルティを課せられる恐れがあります。
トラブル防止のため、計算は確実に行いましょう。
参照:国税庁「建物の取得費の計算」:国税庁「取得費となるもの」:国税庁「譲渡費用となるもの」
②特別控除が利用できるか確認する
売却で利益が出ても、特別控除等の特例が適用できれば、税金を支払わずに済むか軽減できる可能性があります。
節税に役立つ特例を5つご紹介します。
令和9年まで延長!3,000万円特別控除の特例
「3,000万円特別控除の特例」とは、不動産売却で得た利益を3,000万円まで免除してもらえる特例です。
マイホームや相続により取得した被相続人の居住用不動産(空き家)を、売却したときに適用されます。
時限立法であった空き家の特例も、法改正により令和9年(2027年)12月31日まで延長されました。
例えば売却で2,500万円の利益が出ても、本特例により課税対象額は0円です。
3,500万円の利益なら、3,000万円引かれて500万のみ課税されます。
注意点として、空き家については「居住しなくなってから3年目の年末までに売却が必要」などの条件があります。
参照:国税庁「マイホームを売ったときの特例」「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」
マイホームを売却したときの軽減税率の特例
「マイホームを売却したときの軽減税率の特例」とは、不動産の所有年数により税率を下げてもらえる特例です。
売却益に税金が発生する場合、税率は所有年数により以下のとおり変動します。
※居住年数は「売却年の1月1日時点」が基準。
・「短期譲渡所得」 5年以下:39.63%
・「長期譲渡所得」 5年超~10年以下:20.315%
・「10年超所有軽減税率」 10年超:14.21~20.315%
※税率は「所得税+住民税+復興特別所得税」の合算。
10年超所有した場合、売却益が6,000万円以下の部分は税率14.21%、6,000万円超の部分は税率20.315%です。
本特例は、3,000万円特別控除と併用可能です。
利益から3,000万円を控除して残った部分に課税されるため、組み合わせると大きく節税できます。
相続不動産を売却した場合の取得費の特例
「相続不動産を売却した場合の取得費の特例」とは、相続税の一部を不動産取得費に組み込める特例です。
不動産を相続すると、相続税の発生する可能性があります。
また不動産を売却して利益が出ると、その利益についても税金が発生する恐れもあります。
これでは二重課税となり負担が大きいです。
しかし本特例を適用すると、相続税の一部を、不動産の売却益から控除できます。
課税対象となる売却益の額が少なくなるため、節税が可能です。
注意点として適用には、相続が開始された日から3年10か月以内に売却するなど、いくつか条件があります。
また、空き家に関する3,000万円特別控除とは併用できません。
参照:国税庁「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」
特定のマイホームを買い換えたときの特例
「特定のマイホームを買い換えたときの特例」とは、マイホームを買い換えたときに税金の支払いを先送りできる特例です。
通常、マイホームや空き家の売却益で税金が発生すると、すぐに税金を支払わなければなりません。
しかし新しい家の取得費用が売却価格よりも高い場合、本特例を適用すれば、新しい家の売却時まで支払いを猶予してもらえます。
注意点として、「売却代金が1億円以下」「居住期間が10年以上」など、適用にはクリアすべき条件があります。
ただし本特例は、令和5年(2023年)12月31日までに売却した不動産に適用されます。(令和6年度税制改正大綱により延長の可能性あり[小1])
参照:国税庁「特定の居住用財産の買換えの場合の長期譲渡所得の課税の特例」
特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
「特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」とは、住宅ローンが残るマイホームを売却して損失が出た場合に、他の所得と損益通算できる特例です。
例えば4,000万円で取得した不動産を3,000万円で売却したとします。
このときローン残高が3,500万円あると500万円の損失が生まれますが、この損失分を給与所得などと通算可能です。
損益通算すれば、他の所得に本来かかっていた税金を免除もしくは軽減できます。
さらに、損失分は翌年以後も最大3年間にわたって損益通算し続けられるため、節税対策に便利です。
ただし本特例は、令和5年(2023年)12月31日までに売却した不動産に適用されます。(令和6年度税制改正大綱により延長の可能性あり)
参照:国税庁「特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」
③国税庁ホームページの確定申告書等作成コーナーで作成する
適用可能な特例が明確になったら、国税庁のサイトにある「確定申告書等作成コーナー」で確定申告書を作りましょう。
「作成開始」ボタンをクリックし、必要事項を記入していけば申告書を完成できます。
申告書の提出方法についても解説します。
e-Taxによる送信
e-Tax(国税電子申告・納税システム)は電子的に税金関連の手続きができるシステムです。
「確定申告書等作成コーナー」でe-Taxによる提出を選ぶと、入力内容をそのまま印刷せずに提出できます。
自宅から24時間いつでも作成・提出できるため、多忙な方に利用をおすすめします。
印刷して郵送などで提出
e-Taxを使わない場合、「確定申告書等作成コーナー」で作成した申告書は以下の方法で提出できます。
・印刷して税務署窓口へ持参する
・印刷して税務署へ郵送する
税務署職員に分からない点を聞きたい方は直接持参すると便利です。
④税金を支払う
申告書や他の必要書類の提出が済んだら、税金を納めます。
納税方法には以下のやり方があります。
・振替納税(国税庁指定日に口座引き落としする方法)
・ダイレクト納付(即時あるいは指定日に口座引き落としをする方法)
・インターネットバンキングやATMからの納付
・コンビニからのQRコードによる納付
・クレジットカードでの納付
自分でもできる!確定申告に必要な5つの書類
ここからは、自分で確定申告するときに必要な5つの提出書類をご紹介します。
書類の不備があると手間も増えてしまうため、ぜひ参考にしてください。
①申告書第三表(分離課税用)
「分離課税」という税分類で、不動産売却の確定申告を行うための書類です。
分離課税は給与所得に代表される総合課税とは異なる仕組みで、税負担を抑える目的で設置されています。
税務署窓口や国税庁のホームページで入手できます。
②譲渡所得の内訳書
売却した不動産の所在地や譲渡額・面積など、詳細な情報を記載する書類です。
譲渡所得の内訳書は、国税庁のホームページや税務署窓口で入手できます。
③不動産の売買契約書のコピー
不動産の売買時に当事者同士で交わす契約書です。
不動産を取得したときの契約書と、売却したときの契約書をそれぞれ用意しましょう。
原本ではなくコピーで事足ります。
④登記事項証明書
不動産の所在地や所有者についての情報が記載された書類です。
オンラインでの交付請求が楽ですが、郵送や法務局窓口での請求も可能です。
窓口の場合、不動産の所在地にかかわりなく、どこでも入手できます。
参照:法務局「登記事項証明書等の請求にはオンラインでの手続が便利です」
⑤各種領収書
代表的な領収書としては、以下の書類が挙げられます。
・不動産取得時の領収書
・不動産売却時の領収書
・仲介手数料の領収書
・登記費用の領収書
自分でもできる!マイナポータル連携の利用でサクッと!
自分で確定申告するとき、少しでも簡単に手続きするなら、マイナポータル連携を利用しましょう。
先述のe-Taxを利用して確定申告の情報を提出する場合、マイナポータル連携を利用することで、手続きがよりスムーズに運びます。
マイナポータル連携とは?
マイナポータル連携とは、所得税の確定申告などにおいて、関係データを一括取得&申告書に自動入力できる機能です。
※マイナポータルとは、マイナンバーカードを使ってさまざまな行政手続きができるWebサイト。
連携させておけば、「確定申告書等作成コーナー」を使って申告書を作成するときに、手間が少なくなります。
連携作業は、原則として一度だけで済みます。
※取得したい証明書などを追加する場合は除く。
マイナポータル連携の手順
マイナポータル連携には以下のツールが必要です。
・マイナンバーカード
・利用者証明用電子証明書パスワード(市区町村窓口で設定した数字4桁のパスワード)
・マイナンバーカードを読み取れるスマートフォンもしくはICカードリーダライタ
・マイナポータルアプリ
まず、マイナポータルを利用するための登録を済ませましょう。
以下はスマホでの操作例です。
- スマホにマイナポータルアプリをインストールする
- マイナポータルアプリを起動する
- マイナンバーカードを読み取りパスワードを入力する
- 利用者登録を行う
続いて連携作業です。
以下に大まかな手順を示します。
- マイナポータルトップページ左上のメニューボタンをタップする
- 「外部サイトとの連携」をタップする
- 「国税電子申告・納税システム(e-Tax)」の「連携」から手続きする
連携手続きが完了したら、「確定申告書等作成コーナー」にアクセスします。
スマートフォンもしくはICカードリーダライタでマイナンバーカードを読み取り、手続きを行ってください。
確定申告をしないと訪れるリスク
意図的であれうっかりミスであれ、確定申告をしないと大きなトラブルが発生する恐れもあります。
問題を未然に防ぐために、申告しないリスクについて把握しておきましょう。
国税庁からアンケート調査が送られてくる
確定申告が必要なのに行わないでいると、「お尋ね」と呼ばれるアンケート調査が、届いてしまうケースがあります。
手紙や電話で来ますが、不動産売却について細かく尋ねられる可能性があるため、面倒を避けたい場合は、やはり確定申告しておきましょう。
不動産売却の情報は、国税庁はすべてを把握しています。
ペナルティが課されることがある
確定申告せず、本来払うべき税金の計算をしないと、ペナルティとして「無申告加算税」を受ける恐れがあります。
この場合、本来の税額に以下の率で金額が加算されてしまいます。
・50万円以下:15%
・50万円超300万円以下:20%
・300万円超:30%→へ引き上げされた
※2024年1月1日以降。
くわえて、延滞税(年により利率が変動)も課されるため、大きな負担になるでしょう。
確定申告をきちんと行えば、不用意な出費を防げます。
参照:国税庁「延滞税について」
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まとめ
不動産を売却したときは、利益が出ても出なくとも、確定申告しておくことで節税につながります。
確定申告したことがない方は「難しそう」と思うかもしれませんが、落ち着いて行えば、自分でも手続き可能です。
本記事でご紹介した手順を参考に、チャレンジしてみてください。
ただし売却を考えているけど、「売却後の手続きは複雑そうで不安」という場合は、プロのサポートを受けるのも良いことです。
その際はぜひ株式会社クルーズカンパニーへお気軽にご相談ください。
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