不動産売却による住み替えには、各種の税金負担を考慮する必要があります。
具体的には「印紙税」「登録免許税」「譲渡所得税」などがかかります。
しかし特例や節税対策を活用することで、税負担の軽減が可能です。
最新の税制改正や制度の活用方法を把握し、効果的な対応を取ることが重要です。
本記事では、住宅の住み替えをする予定の方に役立つ、以下の情報をまとめました。
・不動産の売却時と購入時にかかる税金
・売却時と購入時に適用できる特例
・お得に住み替えをする3つのコツ できるだけお得に住み替えをしたい方に朗報です。
まずは住み替えの手順を確認
住み替えは、現在の住居から新しい住居に移ることです。
そのため「現在住んでいる不動産の売却」と「新しく住む不動産の購入」の2つの取引から成ります。
それぞれの手順はおおむね以下のとおりです。
売却の手順
1.売却相場の調査や査定:不動産の相場を調べたり不動産会社に査定を依頼したりする
2.不動産会社と媒介契約(仲介契約)を結ぶ:不動産会社が不動産の宣伝・販売をする
3.買主との売買契約
4.決済や引き渡し
購入の手順
1.資金計画:不動産購入に必要な資金を確保する計画を立てる(住宅ローンの利用や売却予想額からの予算立てなど)
2.住み替え先候補を探す
3.住宅ローンの事前審査:希望の住み替え先が見つかったら審査を受けてローンを組めるか調べる
4.売主との売買契約
5.住宅ローンの本審査および本契約
6.決済と引き渡し
売却から始める場合は「売り先行」、購入から始める場合は「買い先行」と呼ばれます。 同時にプロセスを進めることも可能です。
不動産売却で発生する税金とは?
住み替えにはさまざまな税金がかかります。
ここからは売却と購入、それぞれにかかる税金の種類を解説します。
まずは売却に関連するケースから見ていきましょう。
大きく、手続きにかかる税金と、売却で利益が出たときにかかる税金に分けられます。
不動産売却に対する税金の支払いのタイミングについては、以下の記事をご覧ください。
不動産売却の手続きにかかる税金
売却手続きでかかる税金には以下があります。
税の種類 | 概要 | 税額 |
---|---|---|
印紙税 | 契約書や領収書など不動産取引で発行する文書にかかる税金 | 売買額により変動 ※2024年時点では軽減措置が適用中 参照:国税庁「不動産売買契約書の印紙税の軽減措置」 |
登録免許税 | 以下3つの登記が対象 ・住所氏名変更 不動産所有者の住所や氏名変更があるときに行う登記 ※売主負担 ・抵当権抹消 住宅ローンの担保として不動産が抵当に入っている場合に、それを抹消する登記 ※売主負担 ・所有権移転登記 不動産の新しい所有者を登記する ※一般的には買主負担 | ・住所氏名変更:1,000円/1登記 ・抵当権抹消:1,000円/1登記 ・所有権移転登記 土地:固定資産税評価額の2% (2026年3月31日まで1.5%) 建物:固定資産税評価額の2% (条件を満たすと0.3%) 参照:国税庁「登録免許税の税額表」 |
消費税 | 以下のようなケースで発生する ・不動産会社の仲介で売却する場合、仲介手数料に消費税がかかる ・ローンが残っている不動産を売却するために繰り上げ返済をする場合、手数料に消費税がかかる ・投資用マンションや賃貸マンションを売却するなど「事業」として対価を得て売却する場合 | 建物に対して所定の消費税率 ※土地に対してはかからない |
注意点として、登記手続きを司法書士に代行してもらう場合は、司法書士への手数料が5万円前後かかります。
不動産売却で利益が出たときにかかる税金
不動産売却により利益が出ると、譲渡所得税が課税されます。
ここでいう利益とは、売却額が不動産取得にかかった金額より高い場合を指します。
たとえば、Aさんが3,000万円で取得した不動産を4,000万円で売却した場合、利益は1,000万円です。
※分かりやすくするために、減価償却費は割愛。
譲渡所得税の税率は、不動産を譲渡した年の1月1日における所有期間により異なります。
・「短期譲渡所得」5年以下:39.63%
・「長期譲渡所得」5年超~10年以下:20.315%
・10年超:14.21~20.315%
※所得税・住民税・復興特別所得税を含む。
ただし利益が出たからといって、必ず課税されるとは限りません。
詳しくは後述しますが、特例を活用すると一定額を控除でき、譲渡所得税がかからないか安くなるケースもあります。
不動産売却で損失が出たとき
仮に売却して損失が出た場合は、特例を活用すると節税になります。
ここでいう「損失」とは、不動産の売却額が、不動産取得にかかった費用を下回る場合です。
たとえば、Aさんが3,000万円で取得した不動産を2,000万円で売却した場合、1,000万円の損失が出ます。
特例を活用すると、損失分が無駄にならず、所得税などを減免してもらえます。
給与所得と損益通算することで節税
不動産売却の損失分は、給与所得や事業所得などと損益通算できます。
※損益通算とは、損失と利益を相殺すること。
前項の例では、Aさんは売却により1,000万円の損失を出しました。
この1,000万円を、給与所得や事業所得などに課せられる課税所得から差し引けます。
たとえば、Aさんの課税給与所得が600万円の場合、1,000万円を引くと課税給与所得はゼロです。
つまり本年度の給与所得には課税されなくなります。
マイホームであることや確定申告をすることなど一定の条件を満たす必要がありますが、適用されると大きな節税が可能でしょう。
注意点として2024年4月時点では、本特例の適用期限は「令和7年(2025年)12月31日までの売却」です。
控除しきれないときは繰越控除できる
損益通算をしても損失分がまだ残る場合は、翌年以降最大3年間にわたって控除を繰越できます。
前述の例では、1,000万円の損失分と課税給与所得600万円を相殺したとき、まだ400万円の損失分が残ります。
この場合は翌年に再び、400万円を課税給与所得600万円から控除可能です。(所得は変わらないと想定した場合)
不動産売却の損失額が大きくても、本特例を使えば、純粋な損失を被らずにすむでしょう。
繰越控除についても、適用期限は「令和7年(2025年)12月31日までの売却」です。
参照・国税庁:「マイホームを買い換えた場合に譲渡損失が生じたとき(マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)」
:「住宅ローンが残っているマイホームを売却して譲渡損失が生じたとき(特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)」
不動産売却のときに使える特例
不動産を売却するときは、積極的に特例を活用することをおすすめします。
特例により、節税や税金支払いの繰り延べなど、税制面でのメリットがあるからです。
活用したい特例を3つご紹介します。
買い替え特例
買い替え特例とは、別のマイホームに買い替える場合に、譲渡所得税の支払いを繰り延べできる特例です。
税金が減免されるのではなく、あくまで将来に支払うとの取り決めですが、すぐに支払わずにすむことで時間的余裕が生まれます。
繰り延べ期間は、買い替えたマイホームを売却するときにまでおよびます。
適用には、令和5年12月31日までに売ることや売却代金が1億円以下であることなど一定の条件を満たす必要があります。
軽減税率の特例
軽減税率の特例とは、譲渡所得税にかかる税率を軽減する特例です。
「不動産売却で利益が出たときにかかる税金」の見出しでも触れましたが、税率は不動産の所有期間により異なります。
譲渡年の1月1日における所有期間が5年以下では39.63%かかりますが、10年超なら14.21%まで下がります。
ただし14.21%が適用されるのは、課税譲渡所得が6,000万円以下の部分です。
それを超える部分については20.315%になるためご注意ください。
なお本特例は、次項の「3,000万円の特別控除の特例」と併用可能です。
3,000万円の特別控除
3,000万円の特別控除とは、譲渡所得から最高3,000万円まで控除できる特例です。
たとえば不動産の売却で3,000万円の利益が出た場合、本特例を適用できると3,000万円控除されます。
利益が4,000万円なら3,000万円引いた残りの1,000万円に対して課税されます。
適用には、自分が居住しているか居住していたマイホームであることや、売主と買主の間に親子関係や夫婦関係といった特別な関係がないことなど、いくつかの条件を満たさなければなりません。
前項の「軽減税率の特例」とは併用可能です。
住み替え不動産を購入する際にかかる税金
不動産を購入するときにかかる税金には、以下が挙げられます。
・印紙税:売却と同様で不動産売買に関する契約書や領収証などにかかる税金
・登録免許税:前述の「所有権移転登記」などにかかる税金
・消費税:不動産会社の仲介で住宅を購入する場合にかかる税金(個人売買では発生しない)
これらの税金については、おおむね売却時と同じ要領で税金が発生するため、詳細は割愛します。
購入時にはほかに、以下の税金がかかります。
・不動産取得税:不動産取得に対する税金で、税率は「固定資産税評価額の4%(令和9年3月31日までに取得した住宅や土地は3%)」
・贈与税:祖父母や親などの直系尊属から不動産を譲渡された場合にかかる税金
住み替え不動産を購入するときに利用できる特例
住み替え先の不動産を購入する場合にも、お得な特例を活用できます。
例として「住宅ローン控除」について解説します。
住宅ローン控除
住宅ローン控除とは、住宅ローンを利用して家を購入する場合に、一定額を所得税から控除・還付してもらえる特例です。
入居してから最長で13年間、年末の住宅ローン残高をベースに、一定額を所得税から控除できます。
所得税から控除しきれない場合は、翌年度の住民税から控除可能です。
控除率は2024年4月時点で0.7%です。
※住民税は課税総所得金額などの5%の範囲内。
カウントできる年末のローン残高には上限が設定されており、最大控除額にも上限があります。
各種上限や控除期間については、住宅タイプや入居時期・世帯タイプなどにより細かく分かれているため、どの項目に該当するのか確認が必要です。
なお本特例の適用には、控除を受ける年の合計所得金額が2,000万円以下であることや、住宅ローン返済期間が10年以上など、一定の条件を満たす必要があります。
注意点として、前述の売却時に活用できる3,000万円の特別控除とは併用できません。
どちらの特例を活用するほうがお得になるかは、ケースバイケースです。
自身の所有する不動産にどの特例が適用できるか知りたい場合は、信頼できる不動産会社に相談するとよいでしょう。
東京都内のマンション購入は…。
【実践編】お得に住み替えをするコツ3選
住み替えを有利に進めるには、以下のコツを実践するようおすすめします。
・住宅ローンの控除が上限を超えたときに住み替える
・不動産売却しやすい季節に住み替える
・迷ったら売り先行で住み替える
それぞれのコツについて詳しくご紹介します。
住宅ローンの控除が上限を超えたときに住み替える
住宅ローンの控除期間には、10年ないしは13年間の上限があります。
状況が許すなら、上限いっぱいまで控除を受けてから住み替えすると、特例の恩恵をより活かせるでしょう。
住宅ローン控除は、適用条件を満たす限り、基本的に何度でも利用可能な制度です。
現在の住居で適用し、住み替え後の住居で再度適用することもできます。
そのため、適用中の控除をできるだけ長く使うほうが、総合するとより長く住宅ローン控除を受けられます。
たとえば、最初の控除を8年間受けて、2回目の控除を13年間受ける場合、合計控除期間は21年間です。
一方、2回とも13年間ずつ控除を受ける場合、合計期間は26年間と5年間も長くなります。
不動産売却しやすい季節に住み替える
不動産売却は一年を通じて盛況なわけではなく、売れやすい時期と売れにくい時期があるといわれています。
需要が大きくなる時期をねらって売り出せば、成約を早めたり、売却額をあまり下げずにすんだりできる可能性があります。
一般的に売れやすい時期は2~3月あたりでしょう。
新生活を控えて住まいに関する動きが多くなると予想されるからです。
この場合、12月ころから準備してその時期に売りにかかるとよいかもしれません。
人事異動が多いとされる9~10月付近もねらい目でしょう。
この場合は、6~7月あたりに準備を始めるとよいかもしれません。
迷ったら売り先行で住み替える
売却から先に始めるか、購入から始めるか迷う場合は、売り先行で住み替えることをおすすめします。
売却から始めると、売却額がどれくらいになるのか分かるため、その額を基に資金計画が立てやすいからです。
一方買い先行では、旧居がいくらで売れるのか分からない状態です。
旧居の売却額を高く見積もって高めの新居を購入したものの、仮に旧居が想定より大幅に安く売れてしまったら、資金面で行き詰ってしまうかもしれません。
また買い先行だと、旧居が売れるまでは、新居のローンと旧居のローンで二重負担になる可能性が考えられます。
以上の点から、資金面で無難に住み替え計画を立てたい場合、売り先行をおすすめします。
不動産売却による住み替えはクルーズカンパニーにお任せ!
住み替え時には、税金や売却・購入の計画、買主候補探しといった、さまざまな作業が必要です。
不動産売却や購入が初めての場合、忙しくて多くの時間が取れない場合など、個人ですべての作業をこなすのは難しいケースが多いでしょう。
そのような場合はぜひ、クルーズカンパニーへご相談ください。
弊社は、査定・売却・購入・賃貸など住宅に関する幅広いサービスを提供しております。
オウンドメディア「TRENT」をはじめ、国土交通省指定の不動産流通機構が運営する不動産インフラ「REINS」を通し、膨大なネットワークから売買のサポートが可能です。
まとめ
住み替えには、売却時と購入時にそれぞれ各種税金がかかります。
ただし売買方法や売買額などにより、かかる税金や税額は異なります。
また特例の適用有無によっても税額が変わるため、事前に慎重な資金計画が必要です。
住み替えに伴う作業は多岐にわたるため、信頼できる不動産会社のサポートを得ながら進めていくことをおすすめします。