住宅ローンや借金、税金を滞納すると、督促状や催促状が届きます。
督促状や催促状を放置すると、不動産などが差し押さえられます。
不動産が差し押さえられた場合、債権者の許可を得なければ債務者の意思で自由に売却できません。
当記事では、差し押さえられた不動産を自主的に売却する方法として「任意売却」という選択肢の全容を解説します。
債権者の同意や期間を限られる難易度の高い任意売却を成功させるコツをご紹介し、住宅ローンや借金、税金の滞納により債務に悩む方の生活再建の一役を担います。
差し押さえられた不動産を売却する方法は競売・公売か任意売却
不動産が差し押さえられた場合、所有者であっても自由に売却することはできません。
なぜなら、差し押さえ不動産には「差押登記」がついてしまうからです。
「差押登記」のついた不動産は、差押登記を解除しないと自由に売却できません。 差し押さえられた不動産の売却(処分)は、「競売・公売」か「任意売却」の2種類に分かれます。
差し押さえ不動産の売却!公売・競売とは
公売とは、国税や地方税を滞納した滞納者の不動産を差し押さえて、滞納する税を回収する目的で強制的に売却することです。公売は債権者が「国税庁や自治体」であり、国税徴収法に基づいて不動産を売却する仕組みです。
競売とはオークションのことで、販売目的で不動産を出品し、最も高い価格を提示した買手に売却する方法です。入札・ビッド方式とも呼ばれます。差し押さえ不動産のケースでは債務者からその借金を回収するために、債権者からの申立を受けて裁判所が強制的に不動産を売り出す仕組みです。
双方とも、物件情報はインターネットの公売・競売サイトで公開されるため、誰でも情報へのアクセスが容易にできます。
また、公売・競売の売却価格の相場は、市場価格の5~7割程度といわれています。
差し押さえ不動産の売却!任意売却とは
任意売却とは、債権者の許可を得たうえで債務者にとって好条件で不動産を売却することです。
競売や公売にかけられた不動産の価格は、市場相場の56%程度に設定されるのが一般的といわれています。
そのため、競売や公売で不動産を売却する場合は、すべての滞納金を返済できない可能性が高まるでしょう。
任意売却であれば市場相場の90%程度の価格で不動産を売却できるため、債務者にとって負債を軽減できるメリットがあります。
任意売却を可能にすることで、強制的に不動産が安値で売却されるのを回避できるため、負債の悩みを軽減できるのです。
不動産が差し押さえられる3つの原因
不動産が差し押さえられる原因は以下の3つです。
それぞれ解説します。
住宅ローンの滞納による差し押さえ
不動産が差し押さえられる原因として、住宅ローンの滞納が挙げられます。
一般的に住宅ローンの返済負担率は、年収の20~25%以内に収めるのが好ましいとされています。
しかし、理想どおりの返済額でローンを組んだ場合でも、給料カットやボーナスカットなど想定外の事態により返済が難しくなるケースもあるでしょう。
住宅ローンの滞納が6~10か月におよぶ場合は、保証会社や金融機関の申立てにより裁判所が競売手続きを開始し、不動産が差し押さえられます。
住宅ローンの滞納が予想される場合は、早めに保証会社や金融機関に相談しましょう。
カードローンの滞納による差し押さえ
カードローンの滞納も、不動産の差し押さえの原因になります。
一般的にカードローンは住宅ローンと異なり、借入可能額の範囲内であれば繰り返し借入可能です。
ただし、借入金額が100万円で月々1万5,000円の返済額に設定した場合、金利は14.5%程度になり返済終了まで約11年もかかります。(※金融機関によって金利は異なります)
返済終了まで11年もある場合、生活スタイルが変わり子どもの教育費やその他の支払いも必要になるでしょう。
そのため、途中で返済が難しくなるケースも少なくありません。
万が一、返済期限を過ぎてしまった場合は、1日ごとに遅延損害金利息が発生するため返済日を過ぎた分だけ返済額は増えます。
遅延損害金利息の計算方法は、以下の計算式により算出されます。
延滞元金×遅延損害金利息÷365日×延滞日数 |
なお、遅延損害金利息は「利息制限法」により上限を1.46倍としています。
カードローンの支払いを滞納し続けると借入残高の一括請求を受けることになり、応じない場合は差し押さえの手続きが開始されます。
カードローンの滞納が原因で、不動産差し押さえの恐れがあることも把握しておきましょう。
税金・保険料などの滞納による差し押さえ
不動産が差し押さえられる原因として、税金・保険料の滞納も挙げられます。
固定資産税・住民税・自動車税などの税金は、「法律の定めるところにより納税の義務を負う」と、憲法第三十条で定められている国民の義務です。
納税の義務を放置した場合は督促状が発送され、10日を過ぎても完納しない場合は財産を差し押さえられます。
また、国民健康保険料を1年6か月以上滞納した場合も、不動産が差し押さえられる原因となるため支払いが難しい場合は市区町村の窓口へ相談しましょう。
差し押さえ不動産は競売か公売で換金される
住宅ローンや税金などを滞納すると、不動産は差し押さえられ最終的に競売もしくは公売によって換金されます。
換金された不動産は、滞納金にあてられる仕組みです。
次に、住宅ローンや税金の滞納から競売・公売までの流れを解説します。
競売になるまでの流れ
競売とは「債権者の申立てにより裁判所が不動産を売却すること」です。
不動産における競売は、住宅ローンの滞納によるケースが大半です。
以下に、住宅ローン滞納から競売までの流れをまとめました。
項目 | 内容 | 滞納期間 |
---|---|---|
督促状の到着 | 滞納分の金銭を支払うよう求める | 1~3か月程度 |
催促状の到着 | 滞納分の金銭を支払わなければ、ただちに法的措置を取ると知らせる | 3~6か月程度 |
期限の利益喪失通知の到着 | 分割払いの権限喪失を知らせる | 4~6か月程度 |
代位弁済通知の到着 | 債務者のローンを保証会社が一括返済したことを知らせる | 7~8か月程度 |
差押通知の到着 | 保証会社が裁判所に申立てすることで不動産差し押さえの事実を知らせる | |
競売開始決定通知の到着 | 債権者による競売の申立てを裁判所が受理したことを知らせる | 10か月程度 |
住宅ローン滞納から競売準備に入るまで、わずか10か月程度です。 競売の準備が整えば、競売物件情報サイトに不動産情報が公開され、入札・買受人の決定・引渡しへと進みます。
公売になるまでの流れ
公売は税金や保険料などを滞納した場合に「国や地方自治体が財産を差し押さえて、現金に換金することで滞納分にあてること」を意味します。
以下に、税金の滞納から公売までの流れをまとめました。
項目 | 内容 | 滞納期間 |
---|---|---|
督促状の到着 | 滞納分の支払いを促す | ・50日以内(国税) ・20日以内(地方税) |
差押調書の到着 | 財産の差し押さえを知らせる | 督促状の発行日より10日 |
公売予告通知の到着 | 不動産の公売予告を知らせる | 差押通知の到着後 |
公売予告通知の到着後、不動産の情報が公開され、公売が開始されます。
税金や保険料の滞納から公売までは、わずか2か月程度です。
差し押さえ不動産も「任意売却」で自主的な売却ができる
任意売却であれば、差し押さえ不動産も債務者の意思で売却できます。
ただし、債権者の承諾が必要です。
通常、残債より売却価格が下回る状態で不動産を売却する場合は、不足分すべてを完済して抵当権を解除する必要があります。
しかし、任意売却では残債より売却価格が下回る場合でも、債権者の承諾が得られれば抵当権を解除してもらえます。
抵当権とは、債務が履行されない場合に不動産から優先的に弁済を受けられる権利のことです。
差し押さえ不動産でも債権者の許可を得ることで、債務者による自主的な売却ができます。
任意売却の可否は債権者によって異なる
任意売却をするためには、債権者の承諾が必要と先述しました。
ただし、承諾が得られるか否かは債権者によって異なります。
債権者が金融機関の場合は可能性が高い
債権者が金融機関の場合は、任意売却を承諾してくれる可能性が高い傾向です。
なぜなら、大半の金融機関は競売より任意売却のほうが回収は有利になると把握しているからです。
一方で、金融機関の方針によっては任意売却を拒否される可能性もあります。
方針や規定の厳しい金融機関では、残債と売却価格が同程度になると予想できるケースで承諾してもらえるケースが多い傾向です。
債権者が個人の場合は交渉次第
債権者が個人の場合は、交渉次第で承諾の可否が決定します。
たとえば、債権者と債務者の間に信頼関係があれば承諾してもらえる可能性もあるでしょう。
ただし、任意売却の知識が乏しい場合や債務者との信頼関係が薄いケースでは拒否される恐れもあります。
債権者が国や自治体の場合は難しい
債権者が国や自治体の場合は、承諾を得るのが難しい傾向です。
税金の滞納に関しては「全額納付しなければ承諾しない」と、厳しく設定している自治体も少なくありません。
話し合いにより滞納分の支払いを積極的に納める意思を見せることで、承諾してもらえる可能性もあります。
任意売却のメリット
任意売却のメリットは以下の3つです。
それぞれ解説します。
競売や公売よりも高値で売却できる
任意売却のメリットは、競売や公売より高値で売却できる可能性が高い傾向にあることです。
任意売却の場合、通常の不動産売却と売り出す市場が同じであるため、市場相場に近い価格での売却が期待できます。
一方、競売や公売においては、下記の理由から市場相場の5~7割程度の低価格で売却されるケースがほとんどです。
・内覧ができない ・購入決定までの期間が短い ・不動産が劣化していても前所有者に責任を追及できない |
市場相場に近い価格で売却できる任意売却であれば、負債を軽減できるでしょう。
プライバシーが守られやすい
任意売却は個人情報を知られることなく手続きできるため、プライバシーが守られやすいメリットもあります。
競売と公売の情報は以下で閲覧できるため、多くの人に知られてしまう恐れがあるでしょう。
競売 | 公売 |
---|---|
不動産競売物件情報サイト | 公売情報 |
裁判所 | 国税庁 |
任意売却であれば、個人情報が外部に漏れる心配は不要であるため、精神的な負担も軽く済みます。
債権者から引っ越し費用を出してもらえることがある
任意売却では、売却代金から引っ越し費用を出してもらえる場合があります。
任意売却後は住宅から引っ越す必要があるため、まとまった引っ越し費用が必要です。
しかし、手持ちの資金がなく引っ越し費用を用意するのが難しい場合もあるでしょう。
引っ越し費用の用意が難しいケースでも、債権者の好意で売却代金から引っ越し代金を差し引いてもらえる可能性があります。
そのため、引っ越し費用が用意できない場合でも安心して新生活のスタートを切れるでしょう。
任意売却業者を選ぶときに知っておきたい再スタートするための3つのポイント
任意売却は不動産売却に関する知識以外に、民法や登記法などのあらゆる知識を必要とする取引です。
任意売却をして経済再生を図りたい場合は、次の3つのポイントを押さえておきましょう。
それぞれ解説します。
任意売却を得意とする不動産会社を選ぶ
任意売却を成功させるためには、任意売却を得意とする不動産会社を選ぶのがポイントです。
任意売却は通常の不動産売却と異なり、債権者への交渉やスムーズな売却のために高い営業力が求められます。
不動産会社の中には、任意売却を取り扱っていないケースもあるでしょう。
任意売却に精通していない不動産会社を選んだ場合、自己破産をすすめられたり期日に間に合わず競売になってしまったりする恐れも考えられます。
不動産会社のホームページを見て、任意売却を得意とする不動産会社を選びましょう。
任意売却には司法書士、弁護士など専門家との連携も必要
任意売却では、司法書士や弁護士など専門家との連携も必要です。
なぜなら、任意売却においては民法や税法などの知識も必要だからです。
また、司法書士や弁護士と連携することで、任意売却後の残債について相談できたり負債の減額も期待できたりします。 信頼のおける不動産会社なら、提携する司法書士や弁護士など、法律のスペシャリストとのワンストップサービスが可能です。
任意売却のゴールは生活再建、指南まで!
生活再建や指南までが任意売却のゴールです。
任意売却後は住宅から立ち退くことになるため、引っ越し費用が必要です。
前述したとおり、任意売却では債権者の善意により引っ越し費用を負担してもらえる可能性があります。
たとえば、現状の貯金額を提示して生活に困っていることを伝えたり、不動産を可能な限り高値で売却したりすることで引っ越し費用を融通してもらえるケースが多い傾向です。
しかし、債権者と交渉したり不動産を高値で売却したりするのは任意売却に精通した不動産会社にしかできないことです。
そのため、任意売却で生活再建を目指すのであれば、任意売却の実績が高い不動産会社・司法書士・弁護士に相談しましょう。
弊社クルーズカンパニーは、不動産売却の専門家が豊富な実績をもとにお客様のお悩みに最適な解決策をご提案いたします。
まとめ
住宅ローンや税金を滞納すると、不動産が差し押さえられ競売もしくは公売にかけられます。
競売または公売にかけられた不動産は、買主にとってデメリットが多いため安値で売却されます。
その結果、多額の負債を抱えきれなくなり、自己破産を選択するといったケースも少なくありません。
任意売却であれば、市場相場と同等程度の高値で売却できるうえに売却後の引っ越し日を話し合いで決定することも可能です。
経済的にも精神的にも負担を軽減できるのが「任意売却」です。
任意売却を成功させるためには、任意売却の知識が豊富な不動産会社や民法・税法に精通した司法書士・弁護士を選ぶ必要があります。
「任意売却」を検討している方は、本記事を参考に信頼できるプロに相談するのもよいでしょう。
その際はぜひ、株式会社クルーズカンパニーへお気軽にご相談ください。